エジプト錠から始まったカギの歴史とは
カギの歴史は紀元前2000年頃のエジプト錠から始まったとされています。エジプト錠は木製の錠とカギからなり、閂と錠を数本のピンで動かないようにしていました。カギを開ける時はドアに開けられた穴から腕を入れてカギでピンを押し上げ、閂を引き抜きます。このことからわかるように、エジプト錠は現在のシリンダー錠とほぼ同じ構造をしていたと思われます。その後、紀元前1000年から300年頃に出てきたのがギリシャ錠です。初期には閂を革紐や綱で縛って複雑な結び目を作る方法もありましたが安全性・防犯性はあまり高くありませんでした。後期にはエジプト錠を応用してより精巧なパラノス錠が考案されました。紀元前750年から30年頃にはエジプト錠やパラノス錠と同じ原理で鉄製のカギがローマで使われるようになりました。またこの頃にはウォード錠の原型はが作られました。ウォード錠とは錠の内部にウォードと呼ばれる障害が設けられており、正規のカギでなければ障害に当たってカギを回すことができない構造になっています。この原理を利用して作られたのが南京錠です。南京錠は地中海沿岸地方から近東にかけて多く使われるようになり、特に中国で広く使われていたようです。ローマでは指輪の形をした南京錠のカギが使われていました。日本でもこの時代に使われていたと思われる海老錠と呼ばれる南京錠が正倉院に保管されています。中世になるとカギもより大型化し頑丈なものが普及してきました。形式はウォード錠同じですが、次第に鍵模様の精巧さや美しさを競うようになりカギが権力や地位の象徴になって行きました。しかし、錠の構造に大きな進歩は見られませんでした。そして18世紀ごろには現在のレバータンブラー錠の原型が発明されました。これは錠の内部に板上でてこのように動くタンブラーと呼ばれる障害が設けられており、正規のカギを回転させることでレバータンブラーが持ち上がりスライドして解錠する構造をしています。19世紀末には現在ある錠の形式や種類はほとんど出来上がりました。